飛行機に乗ると、耳の奥がツンと痛んだり、耳が詰まったように感じたりした経験はありませんか。

このような症状は「航空性中耳炎」と呼ばれます。多くは一時的なものですが、飛行機に乗るたびに悩まされる方も少なくありません。

しかし、耳が痛くなる原因を知り、事前に対策を行うことで、症状を予防したり軽減したりできる可能性があります。

この記事では、

  • 航空性中耳炎の症状と原因
  • 耳の痛みを予防・軽減するセルフケア
  • 病院を受診したほうがよい症状

について、薬剤師がわかりやすく解説します。

飛行機で起こる耳の痛みの特徴

航空性中耳炎とは、飛行機の離着陸時などに起こる気圧の変化によって、耳の中(中耳)の圧力をうまく調整できず、耳に痛みや違和感などが生じる状態です。

主な症状には次のようなものがあります。

  • 耳の奥がツンと痛む
  • 耳が詰まったような違和感(耳閉感)
  • 音がこもって聞こえにくい
  • 耳鳴り
  • まれにめまい

軽症であれば、耳の詰まり感や軽い痛みだけで済み、着陸後数分〜数時間ほどで自然に改善することがほとんどです。

一方で、耳抜きがうまくできない場合などには、針で刺されるような強い痛みや耳鳴りが数時間から数日続くことがあります。

飛行機で耳が痛くなる原因

飛行機で耳が痛くなる原因

飛行機で耳が痛くなる主な原因は、離着陸時の気圧の変化です。

耳の中(中耳)の気圧は、鼻の奥と耳をつなぐ耳管(じかん)という細い管を通して、外の気圧と同じになるよう調整されています

耳管は普段は閉じていますが、つばを飲み込んだり、あくびをしたりすると一時的に開き、中耳の気圧を調整する働きがあります。

しかし、気圧の変化が急だったり、耳管がうまく開かなかったりすると、中耳と外の気圧に差が生じます。その結果、鼓膜が押されたり引っ張られたりして、耳の痛みや耳の詰まり、聞こえにくさなどの症状が現れます。

一般的には、離陸時よりも着陸時のほうが耳管が開きにくいため、耳の痛みが起こりやすいとされています。

飛行機で耳が痛くなりやすい人の特徴

航空性中耳炎は誰にでも起こる可能性がありますが、耳の気圧を調整する耳管がうまく機能しにくい人は、特に耳の痛みが起こりやすいとされています。

次のような方は、飛行機で耳が痛くなりやすい傾向があるため注意が必要です。

  • 風邪をひいている人
  • 花粉症やアレルギー性鼻炎、副鼻腔炎などで鼻づまりがある人
  • 過去に中耳炎を繰り返したことがある人
  • 乳幼児や小さなお子さん

風邪や花粉症などで鼻やのどに炎症があると、耳管の周囲が腫れて空気の通り道が狭くなり、中耳の気圧を調整しにくくなります。

また、乳幼児や小さなお子さんは、耳管の構造や働きがまだ十分に発達していないため、大人よりも気圧の変化の影響を受けやすいことが知られています。

飛行機での耳の痛みを予防・軽減するセルフケア

飛行機で耳が痛くなる原因は、耳の中(中耳)と外の気圧差です。そのため、耳管を開いて気圧差を調整することが、耳の痛みの予防や軽減につながります。

ここでは、機内でできるセルフケアや、事前に準備しておきたいアイテムを紹介します。

離着陸時は耳抜きをする

耳の詰まりや痛みを感じた場合は、耳抜きを試してみましょう。

耳抜きによって耳管が開くと、中耳と外の気圧差が調整されるため、耳の痛みや詰まり感の軽減につながることがあります。

代表的な耳抜きの方法には「バルサルバ法」があります。

【バルサルバ法の手順】

  1. 鼻を軽くかみ、鼻の通りを整える
  2. 口を閉じて、鼻を軽くつまむ
  3. 鼻から息を出すイメージで、ゆっくり圧をかける
  4. 耳が抜ける感覚があれば終了する

強い力で息を吹き込むと、鼓膜や中耳に負担がかかる可能性があるため、無理に行わないようにしましょう。

また、鼻をつまんだ状態でつばを飲み込トインビー法も、耳管を開きやすくする方法のひとつです。バルサルバ法よりも耳への負担が少ないとされ、耳抜きが苦手な方や小さなお子さんにも取り入れやすい方法です。

あくび・つばを飲み込む・ガムをかむ

離着陸時には意識的にあくびをする、こまめにつばを飲み込むなどの動作を行うことで、中耳の気圧調整を助けることができます。

耳抜きのコツがつかみにくい場合は、水を少しずつ飲む、飴をなめる、ガムをかむといった方法もおすすめです。これらの動作によって飲み込む回数が増え、耳管が開きやすくなります。

離着陸中はなるべく眠らない

耳の痛みが心配な方の中には、「寝ていれば気にならないかもしれない」と思う方もいるかもしれません。

しかし、離着陸中に眠っていると、つばを飲み込む回数が減り、耳管が開く機会が少なくなるため、耳の圧力調整がしにくくなることがあります。

特に耳が痛くなりやすい方は、離着陸の時間帯だけでも起きておき、必要に応じて耳抜きを行うなどの対策をするとよいでしょう。

点鼻薬や鼻炎薬を活用する

風邪や花粉症、アレルギー性鼻炎などで鼻づまりがある方は、搭乗前に鼻の状態を整えておくことが大切です。

搭乗前や着陸前に、血管収縮成分(ナファゾリン塩酸塩、テトラヒドロゾリン塩酸塩など)を含む点鼻薬を使用すると、鼻の粘膜の腫れが抑えられ、耳管が開きやすくなることで、耳の痛みの予防につながる可能性があります。

なお、血管収縮成分を含む点鼻薬は、長期間連続して使用すると、かえって鼻づまりが悪化することがあります。使用する際は、製品の用法・用量を守りましょう。

また、アレルギー性鼻炎がある方は、普段使用している抗ヒスタミン薬などを適切に使用し、症状をコントロールしておくことも大切です。

気圧調整機能付きの耳栓を使う

飛行機で耳が痛くなりやすい方は、気圧調整機能付きの耳栓を試してみるのもよいでしょう。

飛行機用の耳栓には、フィルターなどによって耳に伝わる気圧変化をゆるやかにする設計のものがあります。これにより、離着陸時の耳の圧迫感や痛みを軽減できる可能性があります。

一般的に、離陸前や着陸態勢に入るときに装着するのが効果的です。ただし、製品によって推奨される使用方法が異なるため、説明書を確認して使用してください。

子ども・赤ちゃんが飛行機で耳を痛がるときの対策

子ども・赤ちゃんが飛行機で耳を痛がるときの対策

子どもや赤ちゃんは、自分で耳抜きをすることが難しいため、飛行機の離着陸時に耳の痛みや不快感を訴えたり、突然泣き出したりすることがあります。

特に乳幼児は、耳と鼻の奥をつなぐ耳管の構造や働きが大人とは異なるため、気圧の変化による影響を受けやすいとされています。

そのため、事前に対策を知っておき、できる範囲で準備しておくと安心です。

離着陸時におすすめの対策

子どもの耳の痛みを予防するには、大人と同じように飲み込む動作を促すことがポイントです。ただし、小さなお子さんは自分で耳抜きができないことも多いため、年齢に応じて次のような方法を試してみましょう。

  • 授乳やミルクを飲ませる
  • お茶や水を少しずつ飲ませる(飲める年齢の場合)
  • おしゃぶりを使う
  • 飴やガムを利用する(誤嚥の心配がない年齢の場合)
  • 飲むタイプのゼリーを利用する

また、眠っている間は飲み込む回数が減るため、耳が痛くなりやすいお子さんでは、可能であれば離着陸時は起きている状態で、飲み込む動作ができるようにするとよいでしょう。

ただし、無理に起こしたり、嫌がるのに飲ませたりする必要はありません。お子さんの機嫌や体調を優先しながら、できる範囲で取り入れることが大切です。

泣いてしまっても過度に心配しなくて大丈夫

離着陸時に赤ちゃんが泣いてしまうことは珍しくありません。

耳の痛みだけでなく、機内の音や揺れ、浮遊感への不安など、さまざまな理由で泣くことがあります。

また、泣くことであごや喉が動き、結果的に耳管が開いて気圧調整につながる場合もあります。そのため、泣いてしまったこと自体を過度に心配する必要はありません。

ただし、着陸後も長時間泣き止まない、耳を頻繁に触る、耳だれが出る、聞こえにくそうにしているなどの様子がある場合は、耳鼻咽喉科や小児科への相を検討しましょう。

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病院を受診すべき症状の目安

飛行機による耳の痛みや詰まり感は、多くの場合、着陸後しばらくすると自然に改善します。

しかし、症状が長引いたり、強い痛みや聞こえ方の変化が続いたりする場合は、耳鼻咽喉科の受診を検討しましょう

ここでは、様子を見てもよいケースと、早めに受診したほうがよい症状の目安を紹介します。

様子を見てもよいケース

次のような場合は、一時的な気圧差による症状であることが多く、時間の経過とともに改善する傾向があります。

  • 着陸後、数時間ほどで痛みや耳の詰まり感が徐々に軽くなる
  • 耳がこもった感じはあるものの、強い痛みはない
  • 聞こえ方の変化が少しずつ改善している

症状が悪化せず、少しずつ良くなっている場合は、水分補給やあくび、耳抜きなどを行いながら様子を見てもよいでしょう。

早めに耳鼻咽喉科を受診したほうがよいサイン

次のような症状がある場合は、早めに医療機関への相談が必要です。

  • 強い耳の痛みが数日続く
  • 耳の詰まり感や聞こえにくさが改善しない
  • 耳から液体や血が出る
  • めまいや吐き気を伴う

これらの症状は、鼓膜や中耳に負担がかかっているサインの可能性があります。自己判断で様子を見続けず、早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう。

よくある質問(FAQ)

ここからは、飛行機での耳の痛みについて、よくある質問にお答えしていきます。

Q1. 耳の治療中でも飛行機に乗れますか?

耳の治療を受けている方は、飛行機に乗る予定がある場合、事前に主治医へ相談しておくと安心です。

特に、次のような方は搭乗前に医師へ確認することをおすすめします。

  • 現在、中耳炎や副鼻腔炎の治療中である
  • 鼓膜に穴が開いていると言われたことがある
  • 過去に耳の手術を受けたことがある
  • 飛行機に乗るたびに強い耳の痛みが起こる

また、花粉症やアレルギー性鼻炎などで鼻づまりがある方は、耳管が開きにくくなり、航空性中耳炎による耳の痛みが起こりやすくなります。

搭乗前に鼻の症状を適切にコントロールしておくことで、耳の痛みの予防や軽減につながる可能性があるため、不安がある場合は事前に医師へ相談すると安心です。

Q2. 耳抜きを何度もすると耳によくないですか?

耳抜き自体は、適切に行えば問題ありません。

ただし、鼻をつまんで強く息を送り込むバルサルバ法を、力を入れて何度も繰り返すと、鼓膜や耳に負担がかかる可能性があります。

耳が抜けないからと無理に力を入れるのではなく、あくびをする、つばを飲み込む、水分をとるなど、耳管を自然に開く方法も取り入れるとよいでしょう。

Q3. 飛行機での耳の痛みに市販の痛み止めを使ってもいいですか?

耳の痛みが強い場合は、アセトアミノフェンやイブプロフェンなどの解熱鎮痛薬で一時的に痛みを和らげることがあります。

ただし、これらは痛みを抑える薬であり、気圧差そのものを改善するものではありません。耳抜きや水分補給などのセルフケアとあわせて行うことが大切です。

また、持病がある方や普段から薬を服用している方は、使用前に薬剤師や医師へ相談すると安心です。

飛行機の耳の痛みは事前対策で軽減できる

今回は、飛行機に乗ったときの耳の痛みについて解説しました。

  • 飛行機での耳の痛みは、気圧変化の影響で着陸時に起こりやすい
  • あくびやつばを飲み込む、水分補給、耳抜きが予防・軽減につながる
  • 鼻づまりがある場合は、点鼻薬などで鼻の通りを整えておくとよい
  • 子どもや赤ちゃんは、授乳やミルク、おしゃぶりなどで飲み込む動作を促すことが大切
  • 強い痛みや聞こえにくさが続く、耳だれ・出血などがある場合は早めに耳鼻咽喉科を受診する

飛行機での耳の痛みは、事前の準備や離着陸時の工夫で予防・軽減できる可能性があります

症状が強い場合や飛行機に乗るたびに耳の痛みを繰り返す場合は、無理をせず耳鼻咽喉科へ相談し、安心して空の旅を楽しみましょう。

参考文献

Otic Barotrauma (Barotitis Media; Aerotitis Media)/Merck Manual Professional Edition
Ear barotrauma /MedlinePlus. U.S. National Library of Medicine.
Jan TA. Otitic Barotrauma Due to Eustachian Tube Dysfunction and Special Considerations in At-Risk Populations.Otolaryngologic Clinics of North America. 2026.