修学旅行で乗り物酔いしたくない!薬剤師が対策や酔い止め薬の飲み方を解説
修学旅行では、バスや電車、新幹線、飛行機などで長時間移動する機会が多くあります。乗り物酔いしやすい人にとっては、移動時間が大きな不安になるでしょう。
「友達の前で乗り物酔いしたくない」
「気分が悪くなって旅行を楽しめなくなるのが心配」
「どうすれば予防できるのかわからない」
このような悩みを抱える人も少なくありません。
しかし当日の過ごし方を工夫したり、酔い止め薬を正しく使ったりすることで、乗り物酔いしづらくなる可能性があります。
この記事では、修学旅行で乗り物酔いを防ぐための対策や、酔い止め薬の正しい使い方や注意点、乗り物酔いしてしまったときの対処法まで、薬剤師がわかりやすく解説します。
乗り物酔いはなぜ起こる?
乗り物酔いは、目で見ている情報と、耳の奥で感じる揺れの情報が一致しないことで、脳が混乱して起こると考えられています。
例えば、バスや船、飛行機などで長時間揺れが続くと、「目では止まっているように見えるのに、体は揺れを感じている」という状態になります。
この情報のズレによって脳が混乱すると、自律神経のバランスが乱れ、気持ち悪さや吐き気、めまいなどの症状が現れることがあるのです。
また、乗り物の揺れに加えて、寝不足や疲れ、空腹、緊張・不安、車内のにおいなどの要因が重なると、さらに乗り物酔いを起こしやすくなります。
乗り物酔いの症状の進み方
乗り物酔いは、突然ひどい症状が出るのではなく、少しずつ症状が強くなっていくことが多いです。
| 段階 | 主な症状 |
| 初期 | あくびが増える、唾液が増える、顔色が悪くなる |
| 進行 | めまい、冷や汗、胃のむかつき、吐き気が出てくる |
| 重症 | 激しい吐き気、嘔吐、動悸が起こる |
「あくびが増える」「なんとなく気持ち悪い」といった初期症状は、乗り物酔いのサインかもしれません。そのため、「少しおかしいな」と感じたら、早めに対処することが大切です。
修学旅行で乗り物酔いを防ぐための6つの対策
普段から乗り物酔いをしやすい人でも、いくつかの工夫を取り入れることで、乗り物酔いを予防できる可能性があります。
まずは、薬を使わずにできる基本的な6つの対策を確認していきましょう。
対策① 前日は十分な睡眠をとる
乗り物酔いを防ぐためには、前日から体調を整えておくことが大切です。
修学旅行という特別なイベントでは、楽しみな反面、緊張や興奮から十分に眠れないことも少なくありません。
寝不足や疲れが溜まっていると、乗り物の揺れに敏感になり、酔いやすくなることがあります。
前日はできるだけ早めに寝て、十分な睡眠をとるよう心がけましょう。
対策② 出発前は食べ過ぎ・空腹を避ける
実は、お腹がいっぱいの状態でも、空腹の状態でも乗り物酔いは起こりやすくなります。
出発の1〜2時間前を目安に、消化のよい食事を腹八分目程度にとるのがおすすめです。
また、脂っこい食事や刺激の強い食べ物は胃に負担をかけるため、できるだけ控えましょう。水分も適度に補給し、体調を整えてから出発すると安心です。
対策③ 当日の座席を工夫する
普段から乗り物酔いしやすい場合は、事前に先生へ相談し、できるだけ酔いにくい席にしてもらうと安心です。
たとえば、バス移動では一般的に次のような席が酔いにくいとされています。
- 前方の席:進行方向がわかりやすく、揺れも比較的少ない
- 窓側の席:外の景色を見やすく、新鮮な空気を取り入れやすい
- 隣が空いている席:体勢を変えやすく、楽な姿勢で過ごしやすい
座るときは、進行方向を向き、遠くの景色を眺めるようにすると、乗り物酔いの予防につながります。
一方で、タイヤの近くや車両の後方の席は揺れを感じやすいため、できるだけ避けるとよいでしょう。
対策④ アメやガム、ツボ押しを取り入れる
アメやガムを口にすると、気分転換になり、乗り物酔いによる不快感がやわらぐことがあります。特に、ガムを噛むことで気が紛れ、吐き気が軽く感じられる人もいます。
また、手のひらの中央にある「労宮(ろうきゅう)」や、手首の内側にある「内関(ないかん)」は、吐き気対策のツボとして昔から知られています。
飴やガム、ツボ押しだけで乗り物酔いを防げるわけではありませんが、気分が悪くなりそうなときや移動中の補助的な対策として試してみるのもよいでしょう。
対策⑤ スマホや読書などの視覚刺激は避ける
乗り物酔いは、目から入る情報と、体が感じている揺れの情報にズレが生じることで起こりやすくなると考えられています。
そのため、移動中にスマートフォンを見たり、本を読んだりすると、このズレが大きくなり、気分が悪くなることがあります。
手元のものに集中するのではなく、できるだけ遠くの景色を眺めたり、進行方向を見たりするとよいでしょう。
対策⑥ 乗り物酔いへの不安を減らす
乗り物酔いは、体調だけでなく、緊張や不安などの気持ちも影響することがあります。
以前に乗り物酔いを経験した人は、「また酔うかもしれない」という不安から、乗車前から緊張してしまい、症状が出やすくなる場合があります。
「事前に対策をしているから大丈夫」と前向きに考え、リラックスして過ごすことも大切です。
移動中は友人と会話をしたり、学校のルールの範囲で音楽を聴いたりして気を紛らわせることも、不安や緊張をやわらげる方法のひとつです。
酔い止め薬の正しい使い方と注意点
ご自身でできる工夫と合わせて、酔い止め薬を上手に活用することも乗り物酔い対策のひとつです。
市販の酔い止め薬には、子どもでも使用できる製品が多くあります。修学旅行など長時間の移動がある場合は、お子様に合った薬を事前に準備しておくと安心です。
子ども向けの酔い止め薬には、主に以下のような成分が含まれます。
| 成分名 | 主な作用 |
| ジフェンヒドラミンサリチル酸塩 | 第一世代抗ヒスタミン薬 乗り物の揺れによる神経の刺激を抑え、吐き気やめまいなどの症状を和らげる |
| d-クロルフェニラミンマレイン酸塩 | |
| 塩酸メクリジン | |
| スコポラミン臭化水素酸塩水和物 | 乗り物の揺れによりおこる感覚の乱れを抑える |
| ジフェニドール塩酸塩 | めまいや吐き気を抑える |
| ジプロフィリン | めまいや吐き気の症状を予防する 他の成分と組み合わせて含まれていることが多い |
※使用できる年齢や含まれる成分は製品によって異なります。
きちんと効き目のある薬を安全に使うためには、年齢や飲みやすさなど、それぞれのお子様にあった薬を選ぶこと大切です。
「年齢」「服用回数」「剤形」を考慮して商品を選ぶ
市販の酔い止め薬は、製品によって「使用できる年齢」「1日の服用回数」「剤形(薬の形)」が異なります。
年齢は製品ごとに設定されていますが、特に15歳未満の場合は大人向けのものは使用できないため注意しましょう。
服用回数についても、効果の持続時間に合わせて1日1回で長く効くタイプ、1日2回または3回服用できるタイプなど違いがあります。修学旅行中の移動時間や乗り物に乗る回数などに合わせて選ぶとよいでしょう。
薬の形は以下のように色々なものがあります。
- ドリンクタイプ
- チュアブル錠(噛んで飲むタイプ)
- ドロップ
- カプセル
- 錠剤
味もブドウやいちごなど工夫されているものが多いので、お子様が無理なく服用できるものを選びやすくなっています。
酔い止めは移動の30分〜1時間前に飲む
酔い止め薬の多くは、服用してからすぐに効果が現れるわけではありません。
そのため、気持ち悪くなってから飲むのではなく、乗車の30分〜1時間前を目安に服用しておきましょう。
ただし、薬によって服用するタイミングや効果が続く時間は異なるため、必ず説明書などを確認しておくことが大切です。
眠気が出ることがある
多くの酔い止め薬に共通する注意点として、「眠気」の副作用があります。
酔い止め薬には、抗ヒスタミン成分(ジフェンヒドラミンサリチル酸塩、d-クロルフェニラミンマレイン酸塩、メクリジン塩酸塩など)が含まれている製品が多く、服用後に眠気や口の渇きなどを感じることがあります。
修学旅行では観光やレクリエーションなど活動予定が多いため、眠気をできるだけ避けたい場合もあるでしょう。
製品によっては、ジフェニドール塩酸塩やスコポラミン臭化水素酸塩水和物などが主に配合され、眠気が出にくい成分構成になっているものもあります。
購入時には眠気のことも考慮して、薬剤師や登録販売者に相談して製品を選ぶのがおすすめです。
アレルギーや持病がある場合は飲み合わせに注意
持病などで普段から薬を服用している場合は、酔い止め薬との飲み合わせに注意が必要です。
特に、花粉症やアレルギー性鼻炎の薬を服用している方は、酔い止め薬と同じ抗ヒスタミン成分が含まれている場合があります。同じような作用を持つ成分を重ねて服用すると、眠気や口の渇きなどの副作用が強く現れることがあるため注意が必要です。
また、服用中の薬によっては、自己判断で酔い止め薬を併用しないほうがよい場合もあります。
酔い止め薬を使用する前に、服用中の薬や持病について医師や薬剤師に相談し、安全に使用できるか確認しておきましょう。
修学旅行で薬を持たせるときに気をつけること
酔い止め薬などの必要な薬は、修学旅行に問題なく持参できることがほとんどです。ただし、学校によっては事前の申告や管理方法についてルールが決められている場合があります。
また、修学旅行中はお子さん自身が薬を管理することになるため、飲み方や注意点を前もって一緒に確認しておくことが大切です。
学校への事前申告が必要な場合は忘れずに行う
学校によっては、修学旅行中に薬を持参・服用する際、事前の申告が必要な場合があります。
修学旅行のしおりや学校からの案内を確認し、必要な手続きを済ませておきましょう。
また、申告が必須ではない場合でも、万が一体調不良や副作用が起こったときに適切な対応ができるよう、持病の薬を含め、持参する薬については事前に学校や引率の先生へ伝えておくと安心です。
薬の名前や飲み方がわかる状態で持たせる
酔い止め薬は、薬の名前や用法・用量が確認できるよう、元のパッケージや説明書と一緒に持たせるのが基本です。お子さんが飲み方に迷ったときでも、引率の先生が確認しやすくなります。
また、お子さん自身も「いつ飲む薬なのか」「何回まで飲めるのか」を理解しておくことが大切です。説明書だけでは分かりにくい場合は、服用するタイミングや飲む量をメモにして一緒に持たせると、飲み間違いの予防につながります。
自己判断で追加服用しないようにする
酔い止め薬は、決められた用法・用量を守って使用することが大切です。
「まだ気持ち悪いから」「早く効かせたいから」と自己判断で追加服用すると、副作用が現れやすくなることがあります。
また、同じ薬でも年齢によって1回に服用する量(錠数や液量)が異なる場合があります。事前に「何錠(何mL)飲めばよいのか」「1日に何回まで飲めるのか」を親子で確認し、用法・用量を守って使用するよう伝えておきましょう。
乗り物酔いしてしまったときの対処法
事前に対策をしていても、乗り物酔いをしてしまうことはあります。
気分が悪くなったときは、無理をせず早めに対処することで、症状の悪化を防げる場合があります。
無理をせず、落ち着いた環境で休む
気分が悪くなったら、無理に我慢せず、早めに休むことが大切です。
可能であれば座席を少し倒して目を閉じ、安静にしましょう。スマートフォンを見たり本を読んだりすることは避け、できるだけ遠くの景色を眺めるか目を閉じて過ごすのがおすすめです。
また、窓を少し開けて新鮮な空気を取り入れたり、ベルトや襟元など体を締め付けるものを緩めたりすると、症状が和らぐことがあります。
適度に水分補給をする
乗り物酔いになると、気持ち悪くて何も口にしたくなくなることがあります。しかし、水分を補給することで症状が和らぐ場合があります。
特に、嘔吐してしまった場合は脱水を防ぐためにも、水やお茶などを少量ずつこまめに補給しましょう。
先生や引率者へ早めに伝える
症状が強い場合や、気分が悪くなってきたと感じたら、我慢せず早めに引率の先生へ伝えましょう。
「友達に知られたくない」「迷惑をかけたくない」と我慢してしまうこともありますが、早めに伝えることで席を移動させてもらったり、休憩しやすい場所で休ませてもらえたりするなど、症状が悪化する前に対応してもらえることがあります。
また、普段から乗り物酔いをしやすい場合は、修学旅行が始まる前に先生へ伝えておくと安心です。座席などを配慮してもらえることもあるでしょう。
よくある質問(Q&A)
ここからは、修学旅行での乗り物酔い対策について、よくある質問にお答えします。
飲み忘れた場合、乗り物に乗ってから飲んでもいい?
出発前に飲み忘れてしまった場合でも、気づいた時点で服用すれば一定の効果が期待できます。
ただし、酔い止め薬は乗り物に乗る30分~1時間前に服用することで、最も効果を発揮しやすい薬です。症状が出てからでは十分な効果が得られない場合もあります。
また、薬によって服用できるタイミングや回数は異なるため、必ず添付文書の用法・用量を確認しましょう。「効かないから」と自己判断で追加服用することは避け、1日の上限量を守ることが大切です。
移動が複数回ある場合はどうすればよい?
修学旅行では、バス・新幹線・船など複数の乗り物を利用することがあります。
酔い止め薬には、1日1回で効果が持続するタイプと、必要に応じて1日2~3回服用できるタイプがあります。製品によって服用回数や効果の持続時間が異なるため、修学旅行の移動スケジュールに合わせて選ぶとよいでしょう。
ただし、「次に服用するまで4時間以上空ける」など、服用間隔が決められている製品もあります。自己判断で短い間隔で追加服用せず、必ず添付文書に従って使用してください。
事前に移動スケジュールを確認し、「いつ薬を飲むか」を決めておくと安心です。
飛行機を利用する修学旅行でも酔い止め薬は持っていける?
国内線であれば、市販の酔い止め薬は通常問題なく持ち込めます。飲み忘れやロストバゲッジのリスクを防ぐためにも、預け荷物ではなく手荷物に入れて持ち歩くようにしましょう。
海外への修学旅行でも、多くの場合は酔い止め薬を持参できますが、国によって持ち込みが制限されている成分や手続きが異なることがあります。事前に渡航先や利用する航空会社のルールを確認しておくことが大切です。
修学旅行の乗り物酔い対策|事前の準備で楽しい思い出にしよう
修学旅行の乗り物酔いは、事前の準備や当日の過ごし方、酔い止め薬を正しく活用することで、症状を軽くできる可能性があります。
今回のポイントをまとめると、次のとおりです。
- 前日は十分な睡眠をとり、当日は食べ過ぎや空腹を避ける
- 酔い止め薬は年齢や飲みやすさに合ったものを選ぶ
- 酔い止め薬は乗り物に乗る30分~1時間前を目安に服用する
- 学校への薬の申告が必要か事前に確認しておく
- 気分が悪くなったら我慢せず、早めに先生や引率者へ伝える
修学旅行を思いきり楽しむためにも、事前にご自身に合った酔い止め薬や対策を準備しておきましょう。不安がある場合は、薬局やドラッグストアで薬剤師・登録販売者に相談し、適した製品を選んでもらうと安心です。
参考文献
「センパア」製剤情報/大正製薬
「トラベルミン」製剤情報/エーザイ株式会社
「アネロン」製剤情報/エスエス製薬
乗り物酔い/MSDマニュアル家庭版


